これまでの学科の取組History

東海大学ル・マンプロジェクトLe Mans Project

ル・マンへの挑戦~2001年度から2011年度までの11年間のチャレンジ

2001年度から2011年度まで旧林義正研究室でル・マンプロジェクトを実施した。私たちが設計したル・マンカーは「TOP03」(Tokai Original Prototype 03)。当初のオープンボディから卒業研究として課題要素が多いクローズドボディのル・マンカーに変更した。このル・マンカーの設計を進めるためにマネージャー班、人間工学班、足回り班、ボディ班、エンジン班、それぞれが分担して研究および設計を行った。

また、TOP03に先駆け、先行実験車両「Study Car」を製作した。市販車「Jaguar XJR-15」をベースに外観を一新し、エンジンを6L V12から4L V8の「YR40T」に変更し、走行データ採取とエンジンの実走行テストを行なった。
動力機械工学科の四年生と大学院生が中心となり、2001年から活動を続けてきた「東海大学ル・マンプロジェクト」。2010年にはフランス西部自動車クラブ(ACO)が主催するアジアン・ル・マンシリーズで完走を果たすなど、一定の成果を収め、2011年度に終了した。

受験生へのメッセージ

本学科ではモータースポーツを通じたものづくり経験を重視しています。東海大学ル・マンプロジェクトは2011年度に惜しまれながら幕を引きましたが、学生が設計開発したマシンでレースに出場する学生フォーミュラ活動へ多くの学生が参加しています。「Tokai Formula Club」は1 年生から3年生までがフォーミュラ車両の設計開発を行っています。4年生や大学院生になると、研究テーマとして複数の研究室で研究することができます。エアロパーツの性能向上の研究や新しい動力によるフォーミュラ車両の研究・開発などを行っており、得られた成果をフィードバックできる環境を整備しています。

ル・マンカー『TOP03』ギャラリー

2009年度 ル・マンプロジェクトの動向

『アジアン・ル・マンシリーズ』に参戦します (2009.10.22)

2008年6月に大学チームとして世界で初めて、モーターレースの最高峰の一つといわれるル・マン24時間レースに出走した東海大学ル・マンプロジェクトが、今年は10月30日(金)から11月1日(日)まで岡山国際サーキットで開催される『アジアン・ル・マンシリーズ』に参戦します。

歴史的なル・マン挑戦から1年4カ月。その間に、工学部動力機械工学科の学生たちが中心となってマシンの改良を進め、エンジンの吸気系やボディーの空力特性などを大幅に改善して軽量化にも成功しました。

10月19日には、完成した車両の記者発表会を湘南キャンパスの松前記念館で開催。松前義昭副学長(工学部長)や同プロジェクトを指導する林義正教授(総合科学技術研究所)、ドライバー、プロジェクトに携わる学生たちが出席し、詰めかけた多くの報道関係者にアジアン・ル・マン参戦の経緯や体制などを発表しました。

今回のレースでは、本学卒業生の密山祥吾選手と脇阪薫一選手がハンドルを握り、プロのメカニックからサポートを受けながら、大学院工学研究科の見戸克徳さん(2年次生)を中心に学生たちがチーム運営の全般に携わります。漆黒に塗装されたマシン『TOP03』の快走をご期待ください。

※アジアン・ル・マンについて=1999年に創設された『アメリカン・ル・マン・シリーズ』、2004年に創設された『ヨーロッパ・ル・マン・シリーズ』に加え、今年から新たに『アジアン・ル・マンシリーズ』が創設されました。10月30日(金)の予選を経て31日(土)と11月1日(日)に岡山国際サーキットで2レースが開催されます。同レースにはアウディR10、ペスカローロやアストンマーチンなど強豪チームがエントリーしています。また、同レースの各カテゴリーの優勝チームには、来年度のル・マン24時間レースへの参戦権が与えられます。

『アジアン・ル・マンシリーズ』参戦チームに神奈川トヨタ様からブルゾンをご恵贈いただきました (2009.10.30)

10月30日から岡山国際サーキットで開催される『アジアン・ル・マンシリーズ』に参戦する東海大学ル・マンプロジェクトチームへの支援活動として、神奈川トヨタ自動車株式会社の役員4名の皆様が10月26日に湘南キャンパスを訪れ、チームスタッフ用のブルゾン40着と激励の言葉をいただきました。モータースポーツ支援に力を入れるトヨタグループの同社には本学の卒業生が多く在籍しており、その関係もあり、昨年に引き続いて援助を受けたものです。

当日は、松前義昭副学長(工学部長)や同プロジェクトを指導する林義正教授(総合科学技術研究所)、チームを代表して学生3名が、神奈川トヨタ自動車の金子政次氏(常務取締役)と面談し、握手を交わしました。また贈呈式後には林教授がマシン『TOP03』のあるJ館に神奈川トヨタ自動車の方たちを案内し、「岡山国際サーキット会場の特徴に合わせて、昨年よりもボディーの軽量化などを図って臨みます」とレースへの意欲を示しました。

『アジアン・ル・マンシリーズ』の公式予選を8位で通過 (2009.10.31)

東海大学ル・マンプロジェクトが参戦している『アジアン・ル・マンシリーズ』(岡山国際サーキット)で10月30日に予選が行われ、本学のマシン『TOP03』は8位で通過しました。レース本戦は31日(土)と11月1日(日)に行われ、31日のレースで『TOP03』はグリッドの4列目からスタートする予定です。

30日の天候は晴れで、まず午前9時から午後12時45分まで各チームが2時間のフリーテスト走行(公式練習)を行い、予選は午後4時40分から行われました。

今回のレースは、WTCC(ワールド・ツーリングカー・チャンピオンシップ)やフォーミュラBMW、フォーミュラ4などとの併催であるため、サーキットを一日中さまざまなレーシングカーが駆け巡っています。またこの日は一般のファンにパドックエリアも公開されるなど、前日までに比べて人の出入りも多く、めまぐるしい1日となりました。

東海大学チームは、ドライバーの密山祥吾選手と脇阪薫一選手が交互にテスト走行を終えた後、綿密に打ち合わせを行いました。またメカニックの学生たちを相手に、ギヤー比やターボのかけ方の調整、路面状況やタイヤが路面を確実に捉えていないバランスの狂いなど、細かい報告と調整を指示。自分たちの知識や経験を熱心に伝え、レース本番を前に学生たちの気持ちを引き締めていました。

チームをまとめる林義正教授(総合科学技術研究所)は、「予選の順位だけでなく、ル・マンはなによりも耐久性が勝負です。その点では我々のマシンは当初の計画通りの仕上がりで、本選では少しでも順位を上げることを狙っていきたい」と積極的な姿勢を見せています。

『アジアン・ル・マン』で「Motul award for best Japanese Team」を受賞 (2009.11.11)

岡山国際サーキットで行われた『アジアン・ル・マンシリーズ』に参戦した東海大学ル・マンプロジェクトチームは、10月30日の予選で8位となり、同31日と11月1日の本戦に挑みました。

この大会は4つのカテゴリーが同時に出走し、本学のマシン『TOP03』は最高クラスのカテゴリーLMP1(プロトタイプ1)での参戦です。初日の『レース1(3時間)』は午後12時30分にスタート。終盤、左のヘッドライトが消灯するトラブルがあり、緊急のピットインで5分ほどのロスタイムが生じましたが、115周を周回し見事に完走。全体で9位、LMP1クラスで7位という成績をあげました。

終盤のトラブルもあって目標としていた120周にはわずかに届かなかったものの、初日の表彰式で本学チームは、「モチュール・トロフィー/Motul award for best Japanese Team」(日本チーム最高賞)を受賞しました。これは『レース1』に出場した日本チームの中で最上位のチームを讃え贈られるものです。ドライバーの脇阪薫一・密山祥吾両選手とチーム監督の林義正教授(総合科学技術研究所)が表彰台に上がると、大きな歓声と拍手が湧き起こりました。

最終日の11月1日は、午前9時から行われる『レース2(3時間)』に出場すべく、東海大学チームも上位進出を期して早朝から準備に当たり、ウォームアップ走行を開始しました。ところが、ドライバーがエンジンの異常とオイルの匂いに気が付きピットイン。ドライバーシートの背後に積んであるエンジン左側の、シリンダーと排気パイプの付近からオイル漏れがみつかりました。エンジン担当班をはじめ、懸命に状況を把握するためのチェックを行い、エンジン内部のシリンダーヘッドにクラックが見つかり、スタート時間を過ぎてレースが始まったことから苦渋の決断で出走を断念することになりました。

学生の皆さんは悔しさを滲ませ、それでも「ドライバーやメカニックの方々をはじめ、サポートして下さった方々から本当に多くのことを学ぶことができました。感謝をしています。次に向けてやらなければならないこと、やりたいことがたくさんあります。大学に帰ってエンジンを解体し、早く原因をはっきりさせたい」と話していました。

林教授も「学生の皆さんは本当によく頑張ってくれました。このような突然のトラブルが起こりうることを体感することも大切。社会は、このようなトラブルの連続です。それを一つひとつ乗り越えていく、そこに技術の進歩があります。このプロジェクトで体験し、学んだことをぜひ、今後の一人ひとりの人生に活かしてほしいと思います」と語っています。

また、レース場でお会いしたマリ クリスティーヌさんのご紹介で、フランスのOAK・レーシングチームを訪問。OAK・チームは今シリーズでLMP2クラス・チャンピオンとなりました。

2010年度 ル・マンプロジェクトの動向

『アジアン・ル・マン・シリーズ』に参戦します (2010.09.24)

工学部動力機械工学科のル・マンプロジェクトが、11月4日(木)から7日(日)まで、中国・広東省の珠海(ズーハイ)国際サーキットで開催される『アジアン・ル・マンシリーズ』への参戦を決定。9月17日に、東海大学湘南キャンパス17号館ネクサスホールで参戦発表会を開きました。同大会はル・マン24時間レースを開催している西部フランス自動車クラブ(ACO)が主催し、世界中を転戦するインターコンチネンタルル・マンカップの第3戦として開催されるもの。欧米から強豪チームも参戦する、世界的に注目度が高いレースです。

東海大学では、2001年度から同学科の卒業研究に『ル・マンカーの研究』を設定。08年度にル・マン24時間レースに参戦を果たし、昨年10月には岡山国際サーキットで初開催された『アジアン・ル・マンシリーズ』にも出場しました。プロジェクトを通して“真のものづくり教育”を実践し、社会に出て即戦力となる知的能力と実現能力のバランスが取れた学生、課題突破力のある人間性豊かな学生の育成を目指しています。

今大会では、このプロジェクトの理念に対し、精密小型モーターや電子・光学部品などの製造・販売を行っている日本電産株式会社が賛同。メインスポンサーとして支援を受けることになりました。登録チーム名は『TOKAI UNIV. YGK POWER』で、マシンはプロジェクトが開発しル・マン24時間レースにも出場した『TOP03』を改良して使用。大学院工学研究科修士課程2年次生の辻村秀幸さんを学生リーダーに、大学院生、学部生計22人が参加します。監督を東海大学総合科学研究所の林義正教授が務め、ドライバーは脇阪薫一選手と本学文学部卒業生の密山祥吾選手が務めます。

大学関係者や多数の報道関係者が出席した発表会では、辻村さんら学生メンバーをはじめ、高野二郎学長、林教授、脇阪選手、密山選手に加え、日本電産の永守重信代表取締役社長が登壇。高野学長は「社会貢献や国際貢献は大学の責務であり、それらを通したグローバル社会で活躍できる人材の育成は使命。これまでも産学連携に力を入れて学生の教育や研究活動に取り組んできたが、本プロジェクトでも日本電産の協力を得て、さらに力を入れて学生たちの活動を支援していきたい」とあいさつ。日本電産の永守社長は「“ものづくり”には夢があり、学生たちにはこのプロジェクトを通じてそれを実感してもらいたい」と話し、「どんな勝負事でも勝たなくては意味がない。最初から優勝を目指してもらいたい」と激励しました。

学生リーダーの辻村さんは「大学院生はこれまでのレース経験を生かし、学部生は先輩たちから受け継がれてきた技術や情報から、どうすればプロとの差を埋められるか考えて活動してきました。今年のチームはチームワークを最優先し、上下関係なく意見を交わして、責任を持って作業に当たっています。レースをしっかりと走り切り、結果を残すことにこだわりたい」と意気込みを語っています。

『アジアン・ル・マンシリーズ』の予選を通過 (2010.11.07)

自動車レースの『アジアン・ル・マンシリーズ』に参戦している東海大学工学部動力機械工学科のル・マンプロジェクトは、中国・広東省の珠海(ズーハイ)国際サーキットで11月6日に予選に挑み、23チーム中6位(エントリーしているLMP1クラスは6台が出走)の成績で予選通過を決めました。

11月6日の予選は現地時間の午後3時から行われました。雨が降ったり止んだりという路面コンディションでしたが、密山選手、脇阪選手の的確なドライビングにより1.30.869のタイムで予選を通過。フィニッシュ時にはドライバーや教授らと学生が次々に握手をし、お互いの健闘を称え合いました。4日午後の練習走行では、路面の水たまりによる影響でスピンを起こしコース脇の壁に衝突。マシンの破損で一時は予選出場も危ぶまれる中、夜を徹したチーム一丸の修復作業で予選に間に合わせ、さらに決勝出場を決めたことで安堵と喜びが生まれました。

林監督は、「クラッシュした時には走行は無理かと思ったが、重要なパーツが損傷しておらず、学生を中心に走れるレベルまで修復できました。予選は無理をせずに走りましたが、マシンは予想した中でも一番いい状態にあります。さらに修正して、上位での完走を目指したい」と話しています。

また辻村リーダーも、「クラッシュした時は学生全員がショックを受けていました。しかし、すぐに気持ちを切り替え、プロの方や他チームの方にも助けていただき、走れるレベルまで修復できました。5位とも約2秒差なのでしっかり走ればチャンスはある。上位での完走を目指します」と抱負を述べています。

『アジアン・ル・マンシリーズ』で完走しました 総合14位 クラス5位 (2010.11.08)

中国・広東省の珠海(ズーハイ)国際サーキットで開催された自動車レースの『アジアン・ル・マンシリーズ』で、東海大学工学部動力機械工学科のル・マンプロジェクトが7日の決勝に挑み、初の完走で23チーム中14位(LMP1クラス6台中5位)となりました。

決勝は前日の予選とは打って変わった晴天で、レースは現地時間の正午に始まりました。6日の予選で23チーム中6位となった東海大学のマシン『TOP03(登録チーム名『TOKAI UNIV. YGK POWER』)』は3列目からのスタート。レースは6時間の走行距離を競うもので、最初に1000kmを走ったチームが出た時点でも終了となります。チームはまず本学卒業生の密山祥吾選手がハンドルを握り、ピットでは学生たちがタイヤ交換作業などに備えました。

12時44分に1回目のピットインを行い、ドライバーを脇阪薫一選手に交代。その後も学生たちはステアリング調整やヘッドライトの交換など、計7回のピット作業を滞りなく重ねてレースはいよいよ終盤に。午後5時35分にトップを走っていた『チーム・プジョー・トータル』が1000kmを走行した時点でレースは終了。東海大学チームは190周を走り切り、総合14位でレースを無事に終えました。

レース後、学生リーダーの辻村秀幸さん(大学院工学研究科修士課程2年次生)は、「予選前々日のクラッシュから、この結果までに持ってくることができた。徹夜で修復してくれたボディ班、メカニック班はじめ、サポートしていただいた全ての方々に感謝したい。学生一人ひとりが自分の仕事を責任もって果たすことができました。今までのレース経験があったからこそだと思います。課題はそれぞれが自分の仕事に集中するあまり、横のつながりが少なくなったこと。この解決は次のリーダーに託したい」と述べ、チーフエンジニアの本橋良一さん(同)は、「昨日の予選も今日のウォームアップも大きな問題がなかったので、決勝もしっかりと走れると思っていました。昨年の経験を元に、今年は常に先の展開を考えてコントロールすることを意識しました」と話しました。

林義正監督(東海大学総合科学技術研究所教授)は「練習走行でのクラッシュなどアクシデントはありましたが、団結してレースを完走することが出来ました。今回のことでチームの学生たちは大きな自信を持てたと思います」と語っています。

2011年度 ILMC参戦報告Intercontinental Le Mans Cup 1000km Zhuhai

参戦報告 (1)

2011年度は中国珠海で行なわれたIntercontinental Le Mans Cupに参戦することが出来ました。私どもが製作したマシンを実戦の場で走行させる機会をいただいたことに誠に感謝しております。

私達はマシン製作と走行において1番大切なことはチームワークであると考えております。また、本プロジェクトの活動をする上で多くの方々のご協力は切っても切り離せないものであり、本プロジェクトに協力をいただいていることに日々感謝しております。レースウィーク中の作業内容とレース結果のご報告すると共にお礼申し上げます。

レースに参戦するにあたり、10月30日から11月9日まで現地に滞在していました。レースウィーク(11月4日~7日)の前後日はレース準備と撤収日としました。

11月4日

車検 9:00~12:00
非公式練習走行 14:00~17:00
気温 25℃ 天候 曇りのち雨
路面温度 28.9℃   路面状況 ドライのちウエット

この日は午前中に車検審査を受けました。車検ではACOレギュレーションに沿った車両になっているかの審査が行なわれ、車両サイズから各部形状、また安全面等もチェックを受けました。車検では『車体後方からドライブシャフト上方が見えてはならない』というところで指摘をされました。車検終了後直ぐにPit内で網を張ることで対策を行ないました。この対策により無事車検を通過することが出来ました。

行開始となる午後からの非公式練習走行は、3時間に渡るセッションとなりました。ここでは、車両のチェックおよびデータ収集など多くのプログラムを消化しました。この結果、セットアップ変更や新規パーツの投入により、車両はテスト時から大幅な性能向上を果たしている事が確認出来ました。しかし、セッション途中から降りだした雨により、路面コンディションは急速に悪化し、セッション終了直後、ハイドロプレーニング現象により車両はコントロールを失い、左前部より側壁に激突しました。これにより車両はフロントセクションおよび左前後サスペンションなどを大破してしまいました。車体の破損状況は極めて深刻であり、一時は全員がリタイヤを覚悟しましたが、破損部品を丹念に確認した結果、修復できる可能性があると判断され、この日から夜通しの修復作業が始まりました。

参戦報告 (2)

11月5日

公式練習走行 10:30~11:30  15:30~16:30
天候 曇りのち雨

この日の公式練習走行をキャンセルし、本格的な車両の修復作業に入ました。サポートに来ていただいた立山氏、肱黒氏、高原氏の指導の下、ボディパーツ修復にはボディ班、その他車体修復にはメカニック班が中心になりメンバー全員が総出で修復作業が進められました。保有しているスペアパーツが限られていたため、破損したパーツを補修するなどし、翌日の公式練習時間に間に合わせるべく、夜通しの作業が行われました。

参戦報告 (3)

11月6日

公式練習走行  10:00~11:00
予選   15:00~15:20
気温 25℃   天候 雨のち曇り
路面状況   ウエット

車両は最後のアライメントとカウルの修復を終え、午前10時の練習走行開始までに修復を完了しました。練習走行では再び雨によりウェットコンディションとなりましたが、息を吹き返した車両は再びコースインを果たしました。ピットインを繰り返して慎重にチェックを繰り返し、車両には問題がない事が確認されました。練習走行終了後、車両は公式予選に向けてサスペンションやエンジン制御、ウイング等のセットアップを行ないました。前日の公式練習を走行できなかったため、わずかな時間の中で集中的にセットアップが行なわれました。午後3時から開始された公式予選では、変化し続ける路面コンディションの中、終盤にドライタイヤに交換してタイムアタックを行いました。予選通過基準タイムを大きく上回る1:30.869を記録して総合6位という結果を得ました。

参戦報告 (4)

11月7日

Warm Up  9:00~9:20
決勝  12:00~18:00
気温 26.5℃    天候 晴れ   
路面状況   ドライ

午前に行なわれたウォームアップ走行では、ハンドリングの向上と決勝に向けてのセットアップおよび車両のチェックを行ないました。車両セットアップは決勝グリッドに向かう周回まで使って確認が行なわれ、グリッド上でのセット変更も想定して、ぎりぎりまで調整と確認が続けられました。11時50分、マシンはグリッド上に並べられ、オープニング・セレモニーが行なわれる中、メカニックはマシンの最後のチェックを完了しました。

午前12時、遂に決勝がスタートしました。スタートドライバーは密山選手です。密山選手はマシンやタイヤの状態を慎重に確認しながら、コンスタントに周回を重ねて行きます。  27周を周回して、予定通り最初のピットインを迎えます。ドライバーは脇阪選手に交代しスムーズに作業を終え、コースインしました。密山選手のコメントとタイヤの状況などから、その後の走行プランを決定し、想定通りのペースで周回を重ねます。  しかし44周目、ドライバーからハンドリングの異常を訴える無線が入り緊急のピットインをしました。ステアリング周りのトラブルが考えられ、車両のフロント周りのチェックが行なわれました。結果、機械的な破損は見当たらず、ホイールバランサーが外れていたことから、振動によるものであると考えられたため、タイヤを交換してコースインしました。  タイヤ交換後はハンドリングも回復し、順調に周回を重ねて行きます。113周目にピットインし、密山選手に交代しました。この時、レース開始から約3時間が経過しておりレースも折り返し地点に到達していました。

密山選手に交代してから約1時間が経過した時、ピットウォールでドライバーと無線交信をしていたチーフエンジニアが、ライトが消灯していることに気が付きます。昨年のアジアンル・マンでも同様の問題が発生した経験から、回復操作の指示がされましたが、ライトは消灯したままでした。ここでプジョーとポルシェのクラッシュが発生し、セーフティーカーが入り、レースは一時中断となります。このタイミングで車両をピットインさせライトの確認を行った所、フロントタイヤがコース上の巨大なタイヤカス跳ね上げ、フロントフェンダを内側から破壊し、ライトユニットのコネクター部を破損させていました。直ぐにライト周辺パーツを交換し、コース上にマシンを戻しました。

この直後ロガーデータを確認していたエンジニアの1人が、エンジン油圧が低下していることを確認しました。油圧低下はエンジンを破損させリタイヤの原因になる事から、再びピットインさせ、オイル補給を行ないました。このタイミングで給油とタイヤ交換、ドライバー交代を行い、最後のフィニッシュまで走り切る作戦に切り替えました。本レースはトップ車両が1000kmを走りきった時点でフィニッシュとなるレースであり、残り時間は30分を切っていましたが、祈るような思いでゴールの時間を待ちました。  17時36分、ついにチェッカーフラッグが振られました。私たちはピットウォールに集まり、ホームストレートを通過する車両に手を振って車両を迎えました。  レース結果は総合14位となり、悔しい結果とはなりましたが、数々の苦難を乗り越えての完走にチームには強い達成感と感動に包まれました。