吸音性材料を用いた筐体開口部から放射される騒音の抑制

研究目的:

 筐体(きょうたい)内から発生する騒音を吸音性材料によって最大限抑制するには筐体内全域に吸音性材料を配置するのが望ましいと考えられます. しかし,流体の流路やコストの観点から現実的ではないという問題があります.
 本研究では,筐体内に設置される機械装置の機能を損なわずに,優れた騒音抑制効果が得られる吸音性材料の配置を可能にすることを目的としています. 住宅居室等の空間など,本研究で検討する設計法の適用可能範囲は広いと我々は考えています.


研究内容:

 筺体開口部から放射される騒音を抑制するための吸音性材料の配置設計を行うことを考えます.例として,Fig.1に示す筐体モデルを用いることにします. 設計では,まず,数値シミュレーションにより筺体内の粒子速度分布を調べます.次に,抑制対象周波数において粒子速度振幅が大きい位置から順に吸音性材料を配置します. 最後に,開口部から放射される音響エネルギーを評価します.以上の作業を設計仕様を満たすまで繰り返します.
 例えば,吸音性材料の設置面積を壁面全体の30%にするという制約を設けた場合には,Fig.2のような吸音性材料の配置が得られました.

Fig.1        Fig.2
Fig.1 筺体モデル        Fig.2 吸音材配置例(30%)

Fig.2の配置を用いた場合の筺体開口部放射される騒音のシミュレーション結果をFig.3に,計算モデルと同様の装置を用いた場合の実験結果をFig.4にそれぞれ示します. なお,この時の抑制対象周波数はレベルが比較的大きい約440Hzに設定しています. シミュレーション結果と実験結果とは同様の傾向となっており,提案する設計法の有効性が確認できたと我々は考えています.


Fig.3     Fig.3
Fig.3 開口部放射音圧レベル計算結果            Fig.4 開口部放射音圧レベル実験結果


今後の課題:

 これまでの検討では,吸音性材料の設置場所を筺体壁面に限定していました. 今後は,吸音性材料の設置場所についての制約を設けない場合の最適配置について検討します.