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高倉研究室

破膜装置の破膜特性とブラスト波発生機構 (文献[1,2,3])


1.背景と目的

ブラスト波とは衝撃波面直後に膨張波を伴う圧力波であり,通常の衝撃波管により発生する圧力減衰のない垂直衝撃波とは衝撃波面後方の圧力分布や密度分布等が異なり,衝撃波の強さが時間とともに変化していく非定常な圧力波である.自然界で発生するブラスト波の一例としては、落雷等で発生する圧力波が挙げられる.また人工的なものとしては燃料や火薬の爆発で発生する圧力波がブラスト波である.
本研究[1,2,3]では,目的を以下のように設定した.
1) 衝撃波管を駆動させるにあたり機械式と電気式の破膜装置を作製し,両者の破膜特性を比較する.
2) 文献[4]のブラスト波発生装置を用いて,破膜装置が衝撃波やブラスト波生成に及ぼす影響について調べる.

2.実験装置

2-1. 破膜装置
破膜装置はソレノイドとばねと組み合わせて使う機械式破膜装置[2]と,電熱線を用いて膜を焼き切る電気式破膜装置[3]の2種類を利用した.

破膜スイッチは,機械式,電気式ともに同じスイッチで駆動できるようになっている[3]. 簡易的な保護回路を製作し取り付けることによって,安全に破膜指示を出す.この回路の特徴は,ツェナーダイオードを使用することでコイル特有の逆起電力による,装置の破壊を防いでいることである.

2-1-1. 機械式破膜の機構(Fig. 1)
(a) 設置スペースの都合上,装置は高圧部に内臓する.
(b) ばねをあらかじめ縮めておき,ストッパーで固定する.
(c) ソレノイドでストッパーを動かし,ばねを解放する.その力を利用し,刃を隔膜に押し付け破膜する.

(a) 3-D view of device (b) Mechanism: 1 before rupture (c) Mechanism: 2 after rupture
Fig. 1 Mechanical device for rupture (high pressure side)[2].

2-1-2. 電気式破膜の機構(Fig. 2)
ニクロム線をセロハンテープで隔膜に貼り付け,直流電流を流し破膜する.

Fig. 2 Electric device for rupture (high pressure side)[3].

2-2. ブラスト波生成装置
ブラスト波は衝撃波面直後に膨張波を伴った圧力波である.衝撃波管によりブラスト波を発生させる場合には、垂直衝撃波面直後に膨張渡を伴わせる必要がある.
今回は,高圧部内に反射板(Fig.3)を設置し,破膜直後に発生する後退膨張波を反射させ,先行している衝撃波を追従させる方式をとった[4].
また隔膜から一枚目までをDとおき可変させて実験を行った.


(a) Low pressure portion of shock tube

(b) 3-D view of Device
Fig. 3 Blast-wave generator.

3.結論

ブラスト波発生実験においては,低圧部管の長さと高圧部反射板の位置を調整することによって更に自然なブラスト波を発生させることができた.
破膜特性で重要な要素は, 機械式破膜では刃の長さに依存することが分かった.これは,電気式破膜における電熱線の長さに応用できた.
機械式破膜実験では,電気式破膜実験とほぼ変わらない圧力履歴をたどったことから,ブラスト波生成において適切な距離を伝播した後では,機械式破膜装置の機械部分は生成に影響を与えない.

参考文献

[1] 並木琢磨,島村遼,大木慶一,高倉葉子:破膜装置の破膜特性とブラスト波発生機構,平成25年度衝撃波シンポジウム,講演論文集,p-04(USB),2014年3月.
[2] 大木慶一,高倉葉子(指導教員):衝撃波管の構築と破膜特性,東海大学工学部動力機械工学科2012年度卒業論文,2013年2月.
[3] 並木琢磨,高倉葉子(指導教員):衝撃波管における衝撃波の破膜特性とブラスト波の減衰特性に関する実験的研究,東海大学工学部動力機械工学科2013年度卒業論文,2014年2月.
[4] 坂本一朗,拡張部を有する管内を伝播するブラスト波の減衰に関する研究:日本機会学会論文集B編,67巻657号(2001,5),PP.1170-1176.



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