熱動作・熱音響ヒートポンプの研究

工場・自動車廃熱の温度域で動作する、熱動作・熱音響ヒートポンプの研究を行っています。 数値計算によって、低温動作を実現する装置形状や蓄熱器諸元を決定し、多段熱音響エンジンと熱音響ヒートポンプを連結した装置を構築しました。 その結果、可動部品を持つことなく300℃以下の熱から-100℃以下の冷凍を実現しました。

レーザー計測器を用いた可視化

熱音響現象は、振動流体の熱境界層近傍で生じます。熱境界層厚さは通常1mm以下であるために、これを観測するためには微細領域の可視化が必要になります。私たちの研究グループではレーザー(PIV:粒子画像流速測定法、LIF: レーザー誘起蛍光法)を用いて、境界層内の流速振動や温度振動の計測を行っています。

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濡れた蓄熱器のエネルギー変換

蓄熱器を濡らすことで、通常の気体を利用した熱音響現象に加え、水の蒸発と凝縮を利用した熱音響現象が生じるため、熱音響機関の動作温度は低下します。本研究グループでは、濡れた蓄熱器における熱流束密度と仕事流束密度のエネルギー変換を調査しました。 熱力学の第1法則より、蓄熱器における局所的なエネルギー変換は、仕事流束密度の勾配(仕事源)で説明することが出来ます。 まず、水の蒸発と凝縮に関連する熱音響現象の仕事源を解析的に分離しました。 その後、気体のみのエネルギー変換と水の蒸発と凝縮を伴うエネルギー変換を実験的に調査しました。 得られた実験データを解析結果と比較したところ良好な一致を示しました。 さらに、実験、解析ともに水の蒸発と凝縮によるエネルギー変換は、気体のみで得られたものよりも最大4.5倍高いことを確認しました。

相変化型熱音響デバイスの研究

液柱から給水芯で蓄熱器に水を供給することで、継続的な動作が可能な、相変化型熱音響デバイスの研究を行っています。実験では65℃程度での動作を実現しています。沸点の低い液体を利用すれば、更に動作温度の低下が可能です。100℃以下の低温排熱を利用可能な熱音響デバイスへ応用したいと考えています。

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多段熱音響機関の研究

工場などで分散して存在している廃熱を回生するためには、複数の蓄熱器を有する多段熱音響機関が有効だと考えられます。ただし従来の多段熱音響機関は蓄熱の数を増やすと効率が低下するという問題がありました。当研究グループでは、すべての蓄熱器位置で、高い熱効率を実現可能な高音響インピーダンスを満たしながら、複数の蓄熱器の接続を可能とするカスケード型熱音響増幅器のプロトタイプの設計と構築しました。 複数の蓄熱器の接続を可能とするために、蓄熱器と隣接する導波管で構成される各コンポーネントユニットの伝達マトリクスを分析し、固有ベクトルと固有値を数値的に決定しました。 この固有ベクトルを用いて、蓄熱器の多段接続実験を行ったところ、100を超える音響パワー増幅率を得ることができました。

計算流体力学(CFD)を用いた蓄熱器近傍のシミュレーション

計算流体力学(CFD)シミュレーションは、複雑な熱音響現象の数値モデリングにおいて現在では一般的なツールになっています。ただし、フルモデルの熱音響デバイスを計算するためには膨大な計算コストが必要になります。この問題を克服するために、インピーダンス整合境界(IMB)条件を用いた、CFDシミュレーションツールを開発しました。構築したCFDシミュレーションツールを用いることにより、フルモデルの熱音響デバイスから蓄熱器熱交換器近傍のみを切り抜いた、流れ場の計算が可能になりました。

音波による熱輸送の研究

異なる温度に維持され、細管によって互いに接続された2つの液体リザーバー間の熱伝達は、振動流によって著しく強化されることが知られています(ドリームパイプ効果)。 当研究グループでは、液体ではなく音波による熱輸送を実験的に調べました。 実験結果より音波による熱輸送特性は流路径に対する熱境界層厚さの比を用いると、普遍曲線に従うことを示しました。例えば-200以下~1000℃以上の広い温度域で熱輸送が可能なデバイスを構築することが出来ます。